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scene#035 [2005.02.24-03.05]

業務:雪だるま制作班見習い【SOボランティア記録】

(その2)

3日目、2月26日の朝。この日から会場では予選が始まるので、いよいよ臨戦体制だ。とはいっても、今晩が開会式なのだが。まだまだ先は長い。

「あと何日あるんだっけ?」と指折り数えてみたら、まだ今日なんて序の口だという事が分かって笑える。こんなに長期間、外部で過ごすなんて滅多に無いことだ。しかも、観光ではなく、毎日律儀に早起きして「勤務」するわけで。

この日は、会場詰めのヘルプデスク班は朝7時半の集合が命じられていた。競技開始が9時半からなので、その2時間前には会場入りしてもろもろのスタンバイをしておかなければならないからだ。

ヘルプデスク班の仕事でもっとも重要だとされていたのが、「PC類の結露対策」だった。建物内にあるPCなら問題はないのだが、厳冬期の野沢にプレハブ建てて、その中にPCを置いているような場所も少なくない。そうなると、PCが夜は氷るように冷たくなるわけだ。朝、スタッフがやってきてPCを立ち上げるとどうなるか?急に暖まるため、それまでの冷気がいっきに水滴となり、PCを濡らす。そして、バチッ、といって成仏。そうならないように、「朝、ストーブを入れる際はじわじわと部屋を暖めるように。部屋に二つストーブがある場合は、10分おきくらいの間隔で1つづつ点火すること」なんていう冗談みたいなおふれが現地に行き渡っていた。しかも、それだけでは不安なので、危険度の高いPCには電気毛布が支給されていて、業務終了後部屋を退去する際にはPCに電気毛布をかけて帰るという段取りになっていた。大げさな話だけど、そこまでやらないと本当に危ないらしい。そのために、ヘルプデスク班は他の人たちが業務終了して会場を引き上げる際まで居残って、「電気毛布、していってくださいねー」と伝言するし、朝会場にやってきたら、「すぐにPCの電源入れちゃ駄目ですよー」と注意する役目を担っていた。

んなわけで、朝7時半という相当早い出勤時間なわけだ。しかし、バスが1時間に一本しかない関係で、実質は朝6時45分のバスに乗り、現地に7時入りという事になる。相当早い。その他のボランティアの人たちは大抵朝8時現地集合になっており、1時間早い出勤となる。

まあ、全員が到着してからヘルプデスクが仕事を開始しても遅いわけで、仕方がない事だ。宿の人にお願いして、朝6時に食事を食べさせてもらい出発。

昨晩から降り続けた雪は、一晩で30センチほど積もっていた。宿のご主人は朝到着する今晩の宿泊者のために、宿の前の道路を雪かきして大変だった。スキー場がある宿の場合、夜行のスキーバスや夜を徹してやってくる車で来場するお客さんがいるので、朝からスタンバイしなくてはならないのが大変。


大会関係者が乗るシャトルバスの乗り場。こういう看板一つとっても、ちゃんと用意されているのが凄いところだ。

「とりあえず張り紙でもしておけばいいだろ、どうせ期間限定なんだし」

といういい加減さが全くない。「そんなの当たり前じゃん」と思うかも知れないが、殆どをスポンサーからの協賛金や寄付によって成立させているイベントであるし、運営スタッフもプロではない寄せ集め集団だ。それがここまでいろいろ手配しているのだから、凄いと思う。


村内巡回シャトルバス乗り場のうちの一つ、中尾にあるコンビニエンスストア。野沢温泉村中心地には、こことあともう一カ所しかコンビニは存在しない。

ちなみに、ここのコンビニは「ビッグマウス」という。ネズミの絵が描いてあるのに、そのロゴマークの脇に書いてある英語表記は「BIG MOUTH」。大きなネズミじゃなくて「大きな口」だ。要するにほら吹きとかそういう意味合いになる。コンビニ名としてはちょっといかがなモノか、という事を数年来気にしていたのだが、相変わらず直っていなかった。

数日後、野沢温泉村を地元とするボランティアの人とこの話をしていたら、「ああ、あそこのオーナーって大口さんって言うんですよ」と衝撃の事実発覚。なるほど、そういう事だったのか。駄洒落だったのね。


朝7時にやる気満々で現地入りしたが、ヘルプデスク班の出動する機会は殆ど無かった。サブメディアセンターに入ろうとしたが鍵がかかっていて入れない、とかそんな状態。そうか、早く着いたはいいが、鍵を開けるそのオフィスの住人がいなければ我々は中に入れないんだっけ。

そうこうしているうちに、「手が空いている人は雪かきをやってくれ!」という指示が出たため、ヘルプデスク班一同雪かき道具を手に、会場入り口で肉体労働に従事。

「雪かきって産まれて初めてなんですよ」とかいいながら楽しみながら雪をどけていたのだが、次から次へと降ってくる雪の中で人間の力というのはなんたる無力なことよ。大自然は怖いのぅ、侮れないのぅとぼやいていたら、除雪車がやってきて一気に周囲の雪を押しやってしまった。今までの我々の努力は一体どこへ、というくらい圧倒的なパワーだった。これから必要に応じて除雪車を呼んでくれるということだったので、ひとまずは力仕事終了。

その後、ようやく鍵が開いた各部署にお邪魔し、「どうもーヘルプデスク班ですー。PC問題ないですかぁ?」と呑気に声をかけ、「あー問題ないですぅ」と答えがあったら「じゃあちょっと見させて貰いますね」とPCをいじり、WindowsUpdateとNortonのLiveUpdateが動いているかどうかの確認を行って、業務完了。うわ、大したことやってないなあ。LiveUpdateを手動でかけようにも、PCは全てGuest権限でしかログインされていないため、何も操作ができない状態だった。「うむ、ちゃんと最新版のパターンファイルがインストールされているなよしよし」と追認してお仕舞い。

写真は、会場入り口から観客スペースに繋がる地下通路。オリンピックスポーツパークは立派な3階建ての建物だが、ゾーンコントロールの関係で一般客は中に入ることができない。入り口からこの地下通路を通って、観戦ゾーンまで直結だ。寒いからどこかに待避、なんてできない。そんなこともあって、大量に差し入れされていたホカロンを入り口で総務担当の人たちが大量無料配布していた。


こんなところにもアートフラッグが。一体アートフラッグ、何枚作ったんだろう。長野県内の全児童に作らせたんじゃあるまいか。そういえば、この会場に向かう途中にあった陸橋にもアートフラッグがぶら下がっていたな。

ここらで、スノーシューイング会場に配属されているボランティアの役割分担について説明しておきたい。たかが「一会場」とはいえ、ボランティアだけで数百人もいるという規模だ。その役割も細分化されている。

会場責任者、副会場責任者の配下にいろいろな部署がぶら下がっている。ざっと、担当部署名だけ紹介してみよう。
 

総務部:総務係、情報通信係、医事係、総合案内係、接遇係、会場運営部会場係(会場ロジスティクス/給油/給湯、業務班、ファミリーラウンジ支援、アスリートラウンジ支援)、表彰係(アスリート誘導班、受付・待機エリア班、準備エリア班)、文化プログラム係、警備統制係(ゾーンコントロール)、報道係(サブプレスセンター、取材調整・ミックスゾーン)

輸送・宿泊部:輸送係(車両管理、南原駐車場、中尾駐車場、バス乗降所)、宿泊係(大湯連絡所、野沢グランド、H嶋田屋、河一屋、桐屋、かわばた、朝日屋、サンアントン、中尾連絡所、しなざわ、シルクウッド、丸中ロッジ、おばたけ、ベルク丸金屋)

SOタウン:文化芸術・ステージ、ゲーム・文化体験・装飾、プール対応、情報通信班

総勢301名の大所帯だ。

競技運営に関するポジションが全然無いように見えるが、ここは素人さん手出し無用の領域で、我々ボランティアは一切ノータッチになっていた。コース設営や種目毎のコースレイアウト変更といった作業は、地元の野沢スキークラブの人たちが対応していた。

総務部、会場運営部といったセクションの人間は会場内にいるわけだが、輸送・宿泊部とSOタウン担当は会場とは全く縁の無い仕事となる。特に宿泊係は大変で、選手団宿舎にそれぞれ数名配備され、選手団の送迎や食事のお手伝いなどの業務に従事する。だから、朝早く担当の宿に出かけていき、昼間は暇で、夕方から夜にかけてまた仕事がある。同宿の人が宿泊班だったが、会場をうろうろする我々とは全然生活リズムが違っていた。・・・単に、その人は宿舎のご主人と意気投合しちゃって、毎晩お酒を飲んでいたかららしいのだが。

初日に発見された「スタバ軍団」は、その多くがゾーンコントロールと輸送係に割かれていた。スタバ軍団は、スタッフ全員がぶら下げているクレデンシャルカードとは別に、スタバ独自のIDカードをぶら下げているのですぐに分かった。しかも、黄色いカードで写真付きは社員で、緑カードで写真なしはバイトさん、という識別も身につけた。


んで、輸送係の人たちの仕事っぷり。

これは凄い。降り積もる雪のなかで、ひたすら誘導棒を持ってバスを案内している。まさに雪国にボランティアしに来ました!という感じ満々だ。尊敬の念をとりあえず温かい建物内から送る。我々ヘルプデスク班は、基本的に屋外で作業をすることはない。

輸送係の人たちの朝は早く、中尾駐車場担当の人は朝7時過ぎには既に配置について棒を振っていた。

「頑張れよー」とバスから手を振ると、向こうも手を振り返してくる。そんなやりとりがいつしか常態化していった。なんだか温かくて良い。心が温かいだけで、外で仕事している彼らは非常に寒いわけだが。

ボランティア最終日、長野駅前に戻ってきたとき、バス誘導を行っていたボランティアの人に手を振ったのだが全く気づいてもらえず相手にされなかった。忙しくてそれどころじゃない環境だったのだろう。たった10日足らずでも、こうやって文化の差はできる。


忙しい部署は忙しいのだろうが、多くの部署においては暇を持て余していた。与えられている仕事に対して、割り当てられている人数が多いからだ。

これは、ボランティアをどこまで戦力として見なすか、という運営本部側の考え方に依るところが大きいだろう。ボランティアは、無給で働くが故に時には「無責任」になる事もある。「今日はちょっと体調悪いから」といって職場放棄する可能性だってある。雇用契約を結んでいるわけではないので、職場放棄されたからといって何らかのペナルティを課すわけにもいかない。そういう状況であるから、ある程度多めの人数を配備せざるを得ないのだろう。

暇だからといって、「やった、仕事が無いや、ラッキー」というのは給料を貰っている立場において言える事であって、お手伝いをしにわざわざ自腹で野沢温泉まで来ている以上何か仕事がしたい。そうしないと、「自腹」が単なる無駄になってしまいそうだ。そんな意識は誰しもあるようで、この日あたりから徐々に細かいところで創意工夫がなされていくようになっていった。暇だから、ゴミ箱の配置の最適化を考えてみたり、暇だから、ホワイトボードにいろいろ絵を描いたり。

弁当支給場所には、そこまで宣伝せんでもいいだろう、くらいの勢いでホワイトボードにBENTOと書かれていた。


この日、会場には「ノロウィルスが原因と思われる、おう吐・下痢の症状を呈する患者さんからの二次感染防止について」という張り紙が掲示されていた。

何事かと思ったら、何でも野沢温泉内のアメリカ選手団が宿泊している宿で、ノロウィルスが発見されたらしい。感染力が強いノロウィルスなので、一時はちょっとした騒動になったらしい。アスリート達は決して身体が強いわけではないので、感染したら大事だ。


ということもあってか、今日から弁当の準備をしている総務係は一同マスク着用、手袋着用になっていた。しかも、弁当を積む長机にはビニールを敷くという徹底ぶり。昨日までとは大違いだ。


この日のお弁当はこれ。中敷きまでSOロゴ入りという徹底ぶりだ。いろいろな種類のおかずが用意されていて、なかなか豪華だ。

ご飯はこのお弁当とは別に保温容器に入れられて配送されてきて、会場内にて総務係がご飯を盛りつける。だから、温かいご飯のお弁当が食べられる。ありがたいことだ。


会場では50m予選が始まっていた。

この予選で、決勝のディビジョンが分けられる。だから、「予選敗退」なんて事は無い。

このディビジョニングは結構人情主義で、たとえば「出場選手のうち2名だけダントツで遅い」というような事が有れば、その2名だけのディビジョンが作られたりする。そうなると、その二人は決勝で必然的にメダリストになることができる。

そんな仕組みになっているので、毎日競技終了後には各国のヘッドコーチが集まって、決勝のディビジョンを決める会議が行われていた。中身については公表されていないが、「どうすれば出来るだけ多くの参加アスリートがハッピーになれるか」という議論をしているのだろう。

こういうところが、通常のスポーツイベントとちょっと違うところだ。


SOタウン勤務のボランティアスタッフが5名、会場に遊びに来ていた。

「仕事、無いんですか?」と聞いてみたら、

「ノロウィルスが出ちゃったんで、今日はプール運営が中止になっちゃって。だから暇なの」

ということだった。SOタウンには、温泉プールがあってアスリート達に解放しているのだが、こんなところでもノロウィルスの影響があったとは意外だった。

観戦している最中も雪はどんどん降り積もっていく。時々、足下をばさばさと降らないと、足が雪に埋もれる。


まさにアスリート達がスタートラインに立って、走りだそうとしているところ。

知的発達障がい者、というと偏見をもっている人たちは「奇声を発する」とか「挙動不審」という印象があるだろうが、実際こうやってちゃんと競技を行っている。SOというスポーツイベントを通じて、知的発達障がい者が自立していくという趣旨はなるほどこの様子を見ているとよく分かる。目標に向かって、非常に真剣だ。

もちろん、重度の障がい者の場合はこういうスポーツイベントに出るのはやっぱり無理。ここにこうして参加できるのは比較的障がい度合いが軽い人、ということになるのだろうが・・・。


号砲とともに一斉に駆け出すアスリートたち。50m走なので、短期決戦だ。雪煙をあげて、疾走していく。

・・・んだけど、中には歩いているアスリートもいる。早いモノ勝ちの種目なんだけど、いまいち理解出来ていないらしい。

しかし、周囲の観客が「頑張れー」「もう少しだー」と熱い声援を送る。それに対して、ニコニコして手を振るアスリートたち。めっぽう早く走った、競技の趣旨に非常に合致したアスリートよりも、遅いアスリートの方に拍手喝采が集まるという微笑ましい光景だ。

トップでゴールしたアスリートから遅れること1分以上、ようやくゴールしたアスリートはまるで一位をとったかのようにガッツポーズをしていた。彼からすれば、ゴールしたということが非常に誇らしかったのだろう。スタッフ、観客、アスリート、コーチみんなが笑顔になっている空間だった。


要員控え室の脇に置いてあった、巨大鳩車。あまりにインパクトがあったので写真撮影しておいた。

鳩車、とは野沢温泉の名産品だ。通草(あけび)のつる細工が野沢温泉では有名だが、そのうちの一つがこれ。善光寺に鳩が多いことにちなんで作られたものらしい。

とはいっても、何か不思議だ。何故こんな特産品が産まれたのか、未だにその経緯が理解できない。

あけびで籠を編む、というのはよく分かる。非常に実用的な話だ。その次に、技術が高度化したし、生活にゆとりもできたことだし、何かかざりになるようなモノを作ろう、と発想するのも分かる。その結果、善光寺の鳩を模してあけびで鳩を作った、というのもOKだ。

しかし、何故そこに車が付いた?

その発想のぶっ飛び具合が大好きだ。あり得ない組み合わせだ。以前、ダウンタウンの松本人志が大喜利の中で「えのきキャタピラー」という「新しい動物」を発明していたが、それに近いものを感じた。


この日から、会場内のあちこちにゾーンコントロール表示が掲示されるようになった。観客以外は、全て首から「クレデンシャルカード」と呼ばれる写真入り通行証をぶら下げる事になっていて、そこには細かくアクセス権限が記載されていた。

ちなみにこの写真だと、クレデンシャルカードに「2」と記載されている人でないと中に入れない事を意味している。

1:競技・選手エリア
2:管理・運営エリア
3:メディアエリア
4:ゲストエリア
5:家族エリア
6:巡回エリア

という区分けになっていた。ボランティアスタッフは、全員「2」の権限が与えられていて、あとは所属部署に応じて他の番号も付与されていた。ちなみに、ヘルプデスク班は「0」、すなわちオールエリア入場可能となっていた。PCあるところにお仕事あり。どこでも入れるようになっていないと、仕事にならん。

この他にも、クレデンシャルカードのルールは非常に細かくて面白い。会場で配布された「クレデンシャルガイド」を掲載しておくので、暇な人は呼んでみるときっと楽しめると思う。


大湯連絡所、中尾連絡所と外回りを済ませて14時頃会場に戻ってみたら、ずいぶんと閑散としていた。既に多くの部署で本日の撤収準備が始まっていた。

スノーシューイング会場では、おおむね朝9時半から競技が開始され、お昼過ぎには終了してしまう。午後も競技やればいいじゃん、と思うが、他の競技会場の進行もあるんだろうし、きっちりと大会開始日から終了日までスケジュールを埋めておく必要があったのだろう。また、荒天による競技延期も考えて、午後は空けてあるということだろうか。

そんなわけで、我々も15時15分のシャトルバスで会場を引き上げた。サブメディアセンターはまだ営業中だったので、「最後電気毛布かけて帰ってくださいねー」と一言お願いしておく。

SOタウンに移動して、今日SOタウンに張り付いているヘルプデスク班メンバーと合流して全体ミーティングを実施。その席上で、「どうもVPNのセッションがうまく張れないので、昨晩ルータのファームウェアのアップデートを行った」という事実が判明。ぎりぎりになってえらいことをやっとるな。

問い合わせ内容としてはそれほど深刻なものはなく、せいぜいログインパスワードミスを連発してしまい、アカウントロックしちまったんで解除して欲しいといったものだった。ハードウェアトラブルは今のところ皆無。


のどかなSOタウン。今日は17時から長野市のエムウェーブで開会式があるため、SOタウンにはアスリートたちが一人も居ない。

開会式の模様を舞台上にあるスクリーンで放映する、ということだったので、ぼちぼちとボランティアたちが集まっていた。


開会式は17時と中途半端な時間なので、それまでの間SOタウンから遠くない外湯を攻めることにした。

開会式は17時から開始となって、19時に終わる予定で、土曜日とはいえ非常に変な時間帯に設定されている。恐らく、長野各地から集まってくるアスリートたちの事を配慮しての事だろう。午前中は予選が既に始まっているし、夜遅いと明日の競技に影響がでる。

こちらは双葉の湯。

入り口が一つしかないので、一瞬「混浴か?」と思ったとか思わなかったとか。


もちろんそんなことはなく、中で男湯と女湯に別れていた。

湯船は、まさに芋の子を洗う状態。スキーゲレンデから近いからだろうか、土曜日ということもあって人だらけ。


もう一つ、松葉の湯へ行く。ここは建物の二階に浴室がある珍しい作りだ。

二つのお湯を1時間足らずで満喫して、上気した顔でまたSOタウンに戻る。


開会式の全国放送は18時からだったが、長野ローカルでは17時から中継がされていた。開会式の後半しか全国で放送されないというわけで、やはりまだまだ日本では認知されていないイベントだ。開会式の華である、各国ごとの入場行進は「長野ローカル」枠で放送されてしまった。 全国放送ではダイジェストだ。勿体ないなあ。

SOの面白いところは、国を背負って戦っているわけではないということだ。だから、入場するときには国旗を掲げない。あくまでも個人の頑張りの場、という位置づけになっている。そういえば、会場の観客に対しても、「SOの趣旨を理解し、応援の際に国旗の掲示はできるだけ避けるように」という指示があったな。

加えて、入場する際のアナウンスは「日本」とか「中国」といった国名ではなく、「SO日本」「SO中国」といった、組織名で呼ばれていた。このあたり、結構徹底している。

開会式は、ボランティアと寄付によって成り立っている大会の割にはお金をかけた作りになっていた。広告代理店にまんまと乗せられたか。

圧巻だったのは、聖火リレーだった。アスリートの中を、ランナーが走っていくという設定になっていたのだが、アスリートたちはその聖火トーチに触れたくて仕方が無くなったらしい。そのため、アスリートが我先にと聖火ランナーに殺到。手を伸ばしてトーチに触れようとするものだから、もう何がなんだかわからない空間になってしまっていた。危うくトーチがランナーの手から強奪されそうにもなったが、なんとかアスリート集団を突破して事なきを得た。テレビ画面を見ていてリアルにハラハラさせられた開会式は初めてだ。

開会式は、超満員札止め状態の観客を集めたらしい。我々ボランティアの間でも、「何とか現地に侵入できないものか」と議論したのだが、解決策を見つけだせないままSOタウンでテレビを見るにとどまった。

選手団宿舎で働いているボランティアの人が、「選手団付き(DAL)のふりをして、入場行進に紛れ込めないかなあ」といろいろ画策していたが、結局は無理だったようだ。クレデンシャルカードは比較的簡単に偽造できそうなので、オールフリーなパスをカラーコピーで作れば何とかなりそうじゃないか、なんて話をしていたのだが。

「開閉会式会場は特にセキュリティがキビシくって、アリンコ一匹も入れない状態だから無理だと思うわよ」と、事情通の方からご指摘を賜って、あえなく断念。確かに、テロの危険性が考えられるので、エムウェーブは厳戒態勢になっているだろうな。クレデンシャルカード偽造なんかして捕まったら、テロリスト扱いで任意同行だ。やめておいて正解。


2月27日(日)、4日目。この日からヘルプデスク班の勤務時間は朝7時から8時に遅くなった。比較的ゆったりとした出勤となった。とはいっても、結構朝が早いのだが。その代わり、15時には仕事が終わるので、あまり負担感は無い。

この日は、入り口脇に見慣れないポスターが貼ってあった。「チキンラーメン号がやってくる!」とかかれている。無料試食会実施?そりゃすごい。


なるほど、確かに見慣れないワゴン車が停まっている。最近よくオフィス街のお昼時に見かける移動屋台用車だ。チキンラーメンのヒヨコロゴが描かれている。スタッフの方に「無料試食できるんですか?」と聞いたら、自信たっぷりに「ええ、できますよ。是非食べていってください」というありがたいお言葉が。喜んで、試食させてもらうことにした。


スチロールカップに小さなチキンラーメンを入れ、お湯を注いではいできあがり。おお、さすがチキンラーメンだ。めっぽう早い。こういうところは他のラーメンではまね出来ない。麺の中にスープ成分が仕込んであるチキンラーメンならではだ。


要員控室に戻って、チキンラーメンを試食。うん、美味しい。というか、今更試食しなくても十分この味がうまいってのは判っているんだけどね。チキンラーメンを世に広めよう、というよりも日清の企業イメージ向上を狙っての施策だろうか。

スタッフの方にどこから来たんですか?と聞いてみたら、「大阪を起点にして全国行脚をしている」という。まさに旅ガラス状態で、ご苦労様ですとしか言いようがない。でも、この無料試食は非常に嬉しかったので、今後もあっちこっちで試食会を続けていってほしい。


昨日、晴れて開会式があったということもあって、今日から会場も本格始動だ。昨日も予選を行っていたのだが、昨日と今日では人の入りが全然違う。今日は、観光バスで乗り付けて見学に来る人が結構いた。

逆に言えば、「イベント好きな一般人」「スノーシュー大好き一般人」といった、「ちょっと試合観戦に来ましたよ」という人はあまりいなかったようだ。これは、全日通じてそういう傾向だった。やはり、知的発達障がい者の活動に関心がある人でないと、見に来るような事はないのだろう。まあ、確かに自分自身どうだと言われたら、遠路はるばる見に行く気にはなかなかならないのが正直なところだ。

昨日まで暇そうにしていたインフォメーションコーナーのスタッフが大忙しだった。


チキンラーメン屋台が出ているというのが今日の大きなトピックスだったが、観客ゾーンまでの地下道にも変化があった。長机を並べて、物販コーナーが出来ていたのだった。

ピンバッジや人形、ストラップなどのSOオフィシャルグッズを売る店、Tシャツやフリースを売るミズノ、記念切手を売る郵便局。そして、軽食や飲み物を売るお店も出ていた。

秀逸だったのは、北信の地図が描かれているところに、SOの競技会場各地にちなんだ記念切手が貼られているという記念切手台帳だった。各競技会場の郵便局のスタンプが、それぞれ今日の日付で押されている。気が利いているので、ついつい買ってしまった。

そういえば、この競技会場内にはジュースの自動販売機すら存在しない。飲食物を取り扱う出店がない限り、来場者は持ち込みする以外は飲み食いができない事になる。そういう点では、飲食物出店はライフラインとも言えるお店だ。しかし、笑えるのが、SOの公式スポンサーとしてコカコーラが鎮座しているので、売れる飲み物はコカコーラ製品のみに限定されていたということだった。なるほど。

面白かったので、店員さんとあれこれ喋ってみた。

「どうです、売れてますか?」

「いやー、駄目ですねえ」

「ですよねー、今日、チキンラーメンの屋台が出てますし。お客さんの数より多いボランティアたちはお弁当と飲み物が出ますからね」

「そうなんですよねー。」

「チキンラーメン屋台がやってきたのでびっくり、おいこら仕事の妨害をしちゃいかん、みたいな感じですか?」

「いや、屋台が出るってのは聞いていたんですけどね」

「じゃ、なんでわざわざ今日出店したんですか?相当苦戦しますよね、何しろあちらさんは無料試食ときたもんだ」

「いやー、まあ、今回、野沢温泉会場じゃなくって、別の会場なんですけどね、スタッフ用のお弁当の提供をさせてもらったりしてまして、そういうお付き合いもあってこちらに出店したんですけど」

「あー、そういうつきあいの世界ってやつですかあ。なるほど、いろいろありますね。で、こちらのお店としてはチキンラーメンに対抗してどんな売り物が?」

「そうですねー、峠の釜飯なんてありますよ」

「お!峠の釜飯!いいじゃないですか、遠方から来た人は、買うんじゃないですか?キラーコンテンツじゃないですか。もっとPRしないと!」

「いや、でも今日はもう売り切れちゃいまして。横川から朝運んでくるので、数があまり確保できないんですよ・・・」

「あらら。ちなみに普段はどちらでお仕事されてるんですか?野沢温泉なんですか?」

「あ、いえ、普段は長野IC出てすぐのところで働いて居るんですよ。で、イベントがあるとこうやって出店を出すんですけど。おぎのやって知ってます?」

「え?おぎのやさんですか!?なんだ、峠の釜飯の会社じゃないですか。あー、長野IC出たところに大きなドライブインあるなあ。昔朝ご飯食べたことがある」

おぎのやがこういう出店をやっているというのは意外だった。最後、「チキンラーメンに負けないで頑張ってくださいねー」と激励して、店員さんと別れた。


競技会場では、競技が続けられていた。自分の業務に没頭していたら、競技を見ることができるボランティアというのはほぼ皆無だ。なぜならば、みんな各自の持ち場があって、その殆どが競技会場以外の場所だからだ。

知り合いになった人が業務班に所属していたが、彼は朝、2トントラックに乗り込み選手宿舎を巡ることから仕事が始まる。選手宿舎で出た食事のゴミを集め、会場に戻ってから仕分けをするという作業をずっとやっていた。宿舎は何軒もあるし、人数も多いことから何往復かすることになるらしい。

面白いのは、選手団の食事というのはどの宿に泊まろうが、どの会場に滞在しようが一緒ということだ。宿のご飯を食べればいいじゃん、と思うのだが、理由は不明だが全員同じものを食べることになる。宿の食事に格差があったら不公平だ、とかそういう理由があるのだろうか?統一レシピが選手団宿舎に配られているようで、調理は宿が行うけど食材と料理は全員一緒となる。その料理を盛りつけるトレイも、専用のものが用意されていてこれも全選手一緒だとか。不思議な文化だ。

選手団宿舎に足を踏み入れることが無かったので、実物を見たことはないのだが相当しんどい食べ物だったと聞く。一例を挙げると、「ラザニアがあって、スパゲティがあって、フライドポテトがあって、バターライスがあって、パンが2個」とかそんな食事らしい。兎に角、徹底して白米は出ないという。確かに、東アジア圏の人しか白米は食べないだろうから、万国受けする料理を選ぶとなるとこんな結果になるのだろう。

「一食だけならいいけど、開催期間中毎日だからね」と、あるDALは溜息混じりに語っていた。DALは選手団と寝起きを共にするので、食事もバターライスなやつを食べないといけないからたまらない。

ボリュームは結構あるらしい。全部食べなさい、というよりも、人によって宗教的な禁忌や好き嫌いがあるだろうから、えり好みして食べてね、という趣旨と思われる。しかし、それをさっ引いても結構な残飯が出たという話を聞いた。日本選手団もギブアップしたと聞いた。日本選手団だったら宿のご飯を食べた方が遙かに美味しいだろうに、とんだ災難だ。聞くところによると、その「給食」をキャンセルして、村内のラーメン屋に食べにでかけた選手団もあったらしい。ま、そりゃそうだわな。


この日は800m競走の予選が行われていた。ヨーイドンで全員我先に全力疾走するのはいいが、400mトラックを一周した時点でけっこうペースダウン、800mを走り終わる頃にはへろへろになっている状態。普通に走るよりも相当負荷がかかるスノーシューなので、中長距離になると相当しんどいらしい。

予選段階なのでレベル差は相当激しく、トップでゴールインしたアスリートに周回遅れにされそうな最下位アスリートがいたりする。観客、ボランティア、競技運営スタッフ全員が「がんばれー」と絶叫して、最下位アスリートを後押し。

圧倒的だったのが、北欧から参加しているアスリートたちだった。もう、なんともはやダントツ。どのディビジョンにおいても、北欧アスリートが圧勝していた。手足が長くて、その身体の特徴を最大限生かしてぐいぐいと前に進む。さすがは北極圏の国。スノーシューを完全に身体の一部にしとる。


ゴールラインの脇に用意されているプレハブ小屋二軒。手前がアナウンス室で、奥がタイミング室になる。

アナウンサーもボランティア。どこかの局アナとかそういう事はなく、普通の人だった(と、思う。もしプロの方だったらすまん)。日本語アナと英語アナの二人がスタンバイ。

奥のタイミング室には、非常に気むずかしい顔をしたGMSオペレーター達がひしめいている。競技記録をシステム投入する立場にあるので、非常にぴりぴりしている。

途中、GMSに繋がらないといった障がいが発生したときは相当雰囲気が悪かったらしい。班長が一人でその件は対応していたが、「カトウ(長野市内の大会本部にいる情報通信部の人)を呼べ!今すぐ呼べ!」と無茶なオーダーまで出てきたらしい。

メタフレームを使っているので、PC画面にはまさにGMSのシステムが動いているわけだが、実際のGMSそのものは長野市のデータセンタにあるサーバ内にある。だから、GMSがトラブったらもうお手上げ状態。末端会場の野沢ではどうにもならない。まさに会場端末はシンクライアントだ。深刻な通信障がいを想定して、バックアップサーバがタイミング室内にはあるので、万が一の時はそちらに切り替えればよいようにはなっている。しかも、最後の手段として「手動測定、手書き記録」という方法も残してあるので、システムトラブルにより競技中断ということはないわけだが。

ご覧の通り、プレハブ小屋は雪に半分埋まっている。こんなところにPCやプリンタが置いてあるから凄い。ヘルプデスク班の中に、ゼロックス勤務の方がいらっしゃったのだが、彼曰く「こんな環境にプリンタを持ち込もうとしたこと自体凄い。普通あり得ない」ということだった。そりゃ、電気毛布かけないと結露するわ、こりゃ。多分室内の暖房を切ったら、昼間でも即氷点下だ。


タイミング室の屋根に据え付けられていたタイミングシステム

SEIKO製。こういう競技会場ではSEIKOが大活躍だ。


こちらもSEIKO製の八連タイム表示と、一連タイム表示器。この会場にはこの手の設備が常設されていないので、今回臨時設置されていた。

これまたSOならではの発想なのだろうが、八連表示器に表示されるタイムは、上から「ゼッケンナンバー順」だった。早いモノ順、ではないというわけだ。勝ち負けが重視されるわけではないんだよ、ということだろう。それにしても、非常に見にくい。


おや。聖火がいつのまにか。気づかなかった。

ヘルプデスク班班長からおかでんご指名で呼び出しを受けたので、オフィスに顔を出すと「スノーシュー会場の聖火写真を撮影して本部に電送したい。しかしキャノンのデジカメは使い方がいまいちよくわからんので、おかでん君使えるかね」というものだった。

んなわけで、借り物のカメラを手に会場内をうろうろ。これも仕事のうち、ということで。

ヘルプデスクはこんな仕事もやるのですな。


会場では折しも100m予選が繰り広げられていた。

先頭でゴールインしたアスリートから遅れること・・・数分かな、全く走らないで歩きながら周りに手を振っているアスリートをバックに、聖火を一枚。なかなかいい感じだ。


会場には、パトカー2台と救急車がスタンバイしていた。警察官&救急隊員用の控え室が入り口脇に用意されていて、大会期間中はずっとそこでお巡りさんたちが待機していた。幸い出動することは無かったようだが、それにしても非常に大がかりな体制だ。

奥には、NHKの中継車が見える。こういうイベントに興味を示すのはNHKと地元新聞(信濃毎日新聞)くらいなのか。

ちなみにNHK中継車とパトカーの間に挟まれて駐車しているのは、大会運営スタッフが借りているレンタカー。全てトヨタレンタカーで統一されていた。こういうところにも、スポンサーの影響がでる。レンタカーには全て赤い大会ロゴシールが貼られていて、遠目でも識別ができるようになっていた。この会場は公道のどん詰まりにあり、なおかつ駐車場が広くない。だから、この会場の手前1kmくらいのところで交通規制が敷かれ、関係車両以外は立ち入りが出来ないようになっていた。

(つづく) 

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− 菜 單 −

アワレみ隊活動記録 胃袋至上主義宣言[連載] 胃袋至上主義宣言[単発] 思考回路のリボ払い 蕎麦喰い人種行動観察 美貌の盛り へべれけ紀行 食い倒れ帳 愛と幻想の浪速日記

− 連載結束 −

ダイエット!?日記 土下座バイキング