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scene#038 [2005.09.18-19]

山で疲れたのではない、寝床で疲れたのだ 【唐松岳〜五竜岳】

(その9)

09:20

何の写真だったっけ、これ。

進行方向を見た写真なんだか、振り向いて撮影した写真なんだか覚えていない。

撮影した当時は、何か心にひっかかる事があったからシャッターを切った筈なのだが、今となっては何の変哲もない写真だ。


09:25

二ノ背髪というところに到着。

記念撮影をするまでもないのだが、写真を撮影しておくと何時何分に通過したか時刻がわかるので便利。

アルプス平、という文字が看板に見える。アルプス平が僕の山歩きの終着地点。ここまでゴンドラが通じていて、一気に下界まで連れ戻してくれる。


09:35

お隣さんである八方尾根を眺める。

すっと伸びた長大な尾根だ。ところどころリフト駅が見える。なるほど、昨日はこうやって高度を稼いできたのだな、というのがよく分かる。

第一ケルンのあたりからガスがかかっていて、それよりも上は臨むことができなかった。今日も山の上は雲だらけ。きっと山頂付近では今でも雨が降っているのだろう。


09:36

さあ、下界も見えてきましたよ。

遊歩道があちこちに見えてきた。どうやら、リフトで登ってきた一般観光客が散策できるように整備しているらしい。おっと、リフトの支柱も前方に見えてきた。もう少しだ、頑張れ。

それにしても足いってぇ。このまま頑張り続けたら、めくれた足の皮がそのままめくれ続けて、身体全体の皮がひっくり返ってしまうに違いない。早く下山して身体を癒さないと。

うわ、でも温泉に浸かったら痛そう。


09:41

この辺りまで降りてくると、今日これから五竜岳を目指す人たちとすれ違うようになってきた。「ご苦労さまでーす」とお見送りするが、登ってきた人は僕のレインウェア姿を見て「あっ」という顔をしていた。

「上、雨が降っているんですか?」

「いやもう、降っているなんていう話じゃないです。すごい雨と風です。レインウェア必須です」

「そうなんですか・・・憂鬱ですね、それは」

ははは、と笑って別れた。僕はもうそういう境遇ではなくなり、あとはこの明るい空の下下山するだけだ。あともう少しだ、頑張れ自分。

一ノ瀬髪、見返り坂と進んでいく。


09:46

頑張って欲しかったのは自分の靴擦れだけじゃなくて、デジカメのバッテリでもあった。後もう少しで下山、というところでバッテリ終了。まあ、今回の旅はほぼ全て網羅できたから良しとしよう。

リフト乗り場手前に、大きなケルンがあった。地蔵ケルンというらしい。相当にデカい。登山道からちょっと離れて大回りしたところにあるのだが、デジカメのバッテリがあがったのを見た瞬間行く気力が失せた。ケルンへの分岐道に入っていたのだが、折り返して最短ルートでアルプス平まで降りることにした。足が痛いし、デジカメで写真とれないし、頑張る気力が起きんのですわ。

地蔵の頭、という地名に到着した。ここが白馬五竜スキー場の最高地点になる。アルプス展望ペアリフトがここまで通じている。

足はもうへろへろ。筋肉は全然問題なかったし、懸念された膝関節痛もなかった。しかし、靴擦れだけにはどうにも勝てない。もちろんここはペアリフトに乗せてもらいますよ、ええ。

とはいっても、どこにも券売機とおぼしきものは無かった。えっと、このまま乗っちゃっていいんですかね?

職員の人に「乗りたいんですけどー?」と聞いてみたら、「このまま20分ほど降りてもらったところにゴンドラの駅があるので、そこまで歩いていってくださーい」ということだった。あらら、足が痛いんですけどさらに20分すか。

五竜アルプス山野草園、という高山植物園の中を歩いて降りていく。縦横無尽に伸びている遊歩道のうち、一番最短距離になりそうなところを選んで歩く。久々のコンクリの感触が、靴擦れに響く。途中、何か花が咲いていたような気もするが、忘れた。

20分後、アルプス平駅に到着。アルプス360というゴンドラ駅。「北アルプスの眺望抜群、生ビールにモツ煮で乾杯!」なんていう売り文句があるようだが、いやもう、身体べたべた。雨と汗と出血と、泥。そんな状態で「あっはっはー」と笑いながら乾杯なんてできますかいな。水道で靴の泥を落として、さっさとテレキャビンに乗り込んだ。片道860円。さっさと降りて、さっさと汗を流したい。

テレキャビンを降りたところは、エスカルプラザという施設だった。ここには入浴施設があったので、汗を流すことにした。600円。温泉だったかどうかは忘れた。ここを逃すと、近くには入浴施設がないので必然的にこのお湯を使うことになる。

一風呂浴びてから、ふらふらしながらJR大糸線の神城駅まで歩いていった。無料送迎バスもあるようだが、タイミングが悪かった。ペンション村の中を歩いていく。ゆっくり歩いて30分くらいの距離で、神城駅に到着。駅前に何か飲食店があるかと思ったが何も無し。仕方がないので長野駅まで戻ってから食事をとることにした。しばらく待って、長野駅行きの高速バスに乗り込み、長野駅へ。

バスを待つ間、この日の夜に映画を見に行く予定になっていた友人に電話。

「ごめん。今長野なんだけど、あまりに疲弊しちゃっていて今晩会うのは無理だ。休ませて欲しい。この償いはまた別途するから」

「山で疲れたの?」

「・・・うん、山で疲れた。でも、山歩きで、じゃない。山小屋で疲れた」

「??」

よく理解して貰えなかったようだが、とりあえずお許しは貰えた。ほっと一息。とりあえず今日はもうこれにて終了。まだお天道様は頭上にある時間だけど、もう駄目だ。家に帰って寝よう。

長野駅到着後、「どこかビールをぐいっと飲める店はないか?」と思案したが、結局昨日入った「長野駅前食堂」へ。鯖の塩焼きを肴に生ビールをぐいーっと飲んだのであった。ぷはあ。美味いけど、疲れた・・・。

帰りの新幹線で今回の旅を振り返ってみた。記憶に残るは、ひどく疲れたという事実。雨、靴擦れ、そして凶悪な混雑状況の山小屋。ひでぇ目に遭った、という印象ばかりが残る。これだから山はやめられんのだよなあ、と自虐的な言葉を口にしてみたが、冗談じゃねぇ、二度とこういうのはイヤだ。次に山に登るときは、もう少し混雑を避け、快適に眠れるようにしないと。人間、睡眠環境を確保できないとてきめんに弱る。

真剣に、山小屋泊をやめて山歩き用テントを購入しようかと考えた山歩きだった。ふぅ。

(この項終わり) 

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