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scene#041 [2007.09.06-09.08]

地獄と山のマリアージュ【阿蘇山・九重連山】

(その13)

中岳分岐09:39

九重連山最高峰である中岳との分岐。

既にこの時点で目指す久住山は真横右手に位置している。

素通りしてるやん。

落ち着け、悔しい気持ちは分かるが落ち着け。登山ルートというのは、きっと先人達が「一番早く、楽に登れるように」と切り開いたものだ。大回りしているようだけど実はこれが最短なのだよ、きっと。

でもね、岩をぐぐぐいーっとよじ登れば直登できちゃいそうな気もするんですが。それはダメですかそうですか。

よい子は登山道から逸れてはいけません。貴重な自然が荒れます。


Uターン地点09:39

写真を見て欲しい。

緑の草がはげて地肌が出ているところが登山道。

登山道、ここからまっすぐ行って、ぐるーっと右に回り込んでいるのが分かると思う。すなわち、遠回りとはそういうこと。

避難小屋から見たら、「逆Jの字」の登山道を経て山頂に至る、ということになる。それ、ぐるっと回り込んで山頂を正面に見据えようじゃないか。これ以上横目で恨めしげに眺めていたら精神衛生上よろしくない。


山頂に向けた登り09:44

ただいま回り込んでいる最中・・・。

「逆Jの字」のぐいっと丸まっている部分におりますー。

さすがに今まで平地で楽させて貰ってきた分、避難小屋からの道はちょっとキツい。まあ、山登りってのはそんなもんです。山頂まであと一息、ほれ、休まず動け。


山頂直下の道09:48

山頂まであとは一直線に稜線を登っていくだけとなった。

岩のところどころに黄色いペンキが塗られていて、道先案内をしてくれている。

大丈夫、あとは「一番高いところ」に登ればいいんだろ?気を遣ってくれなくて良いぜ。

それにしても、岩がゴロゴロしていて歩きにくい。まっすぐに進みたくても、岩に微妙に阻まれて微妙にルートを右へ左へとそらす事になる。この微妙っぷりが微妙にイヤだ。


山頂が見えた09:51

おっ、山頂が見えた!

いや、表現が正しくないな、山頂を表示する看板とおぼしきものと、人が数名見えた。

山頂でも無い限り、あんなところに人が集っている筈がない。もし「山頂一歩手前で集会」が開かれていたらとても不気味だ。

このあたりは何故かハエが多い。顔にぶつかってくるやら、腕に張り付くやらやたらとうっとおしい。牛が自分のしっぽを揺すりながらハエを追い払っているように、自分も手をワイパーのように振りながら前を目指した。


山頂到達09:53

久住山山頂、1,786.5mに到着。最後は少し疲れが出た。

山腹はあれだけ緑に覆われていたのに、山頂一帯は岩場だ。不思議。

三角点及び標識があるところで記念撮影を行うが、セルフタイマーを待つ間もハエは容赦しねぇ。コノヤロ、あっちいけ。

おかげで、青空のような笑顔で写るつもりが、なんだか不愉快な顔で「記念」撮影になってしまった。嬉しいのかそうでないのかはっきりしろ、という感じ。

撮影終了後は当然一休みしたいが、このハエにはたまらん。山頂標識から随分離れたところにようやく安住の地を見つけ、そこで一息。ふぅ。おつかれさん。

08:09に出発だから所用時間1時間44分か。標準コースタイムが2時間だから、若干の時間短縮はできた。


中岳が気になる09:54

正面にピークが二つ見える。左側が天狗ヶ城で、右側が中岳。ここからそれほど遠くはない。

中岳は九重連山最高峰で、1791m。今いる久住山よりも4.5mほど高いことになる。

ジャンプすれば同じ高さに・・・ならんな、4.5m飛び跳ねるのはさすがに無理だ。

なんだか悔しいね、より高い山が目の前に残されているなんて。

しかも、登山地図をよく読むと非常に挑発的な文言が書かれていた。

中岳 九州本土最高峰

むぅ、九州本土最高峰、という言葉がとてもスパイシーだ。これを無視したらスゲー後悔しそう。「さっさと下山して温泉で汗を流す」のも良いけど、九重に来る事なんてこの先の人生であるかどうか。だったら行ってしまった方が良さそうだ。えーい行くかぁ。

ああ、温泉が遠ざかっていくよ。レンタカー返却時間は・・・多分問題ない、まだ十分余裕をもって行程は作ってある。でも温泉はサヨウナラだな。

それにしても気になる表現だ、「九州本土」の最高峰。九州の最高峰じゃないのか。・・・あ、分かった、屋久島にある宮之浦岳が九州の最高峰になる(1,935m)ので、敢えて「九州本土」という表現にしたのか。

それが分かった瞬間、「やっぱ温泉・・・」という気持ちに傾いたのは事実。しかし、このまま中岳を見過ごすのは悔しいので、「なんとか頑張って中岳行こうぜ。で、早く下山して、ひょっとしたら温泉入れるかもしれないじゃん」と一挙両得の都合の良い口実を自分に与えた。

それ、そうとなれば久住山とはおさらばだ。登山者はより高いところを目指す。いざ中岳へ。


中岳に向かう10:13

中岳に向かう。

牧の戸峠に向かう分岐で一瞬躊躇してしまったが、今更引き下がるわけにはいくまい。

遙か向こうでは三俣山が悠然と構えつつニヤニヤして、「で、アンタはどっちに行くんだい?ああん?」と眺めている。

行ったらぁ、中岳。


空池10:19

中岳、というと九重連山の中央にででーんとそびえているような印象があるが、決してそうではない。むしろ、中岳の名前にふさわしいのは場所とスケールからして三俣山だと思う。でも、「三俣山」って名前付いちゃってるもんなー。今更変更はできないよなー。

中岳への道の途中、まるでその一帯だけ巨大スプーンで深くえぐりとられたかのような場所があった。空池と言うらしい。大雨でも降れば池になるかもしれないが、確かに今見る限り水はない。すっからかんだ。底の部分に湿り気すら感じられない。なるほど、だから空池か。

ルートは、この空池を回り込みつつ進む。


御池10:25

空池を越えて行くと、今度は本当の池が出現した。ここは御池という名前らしい。ご丁寧に「ここは御池です」という看板が出ている。

先ほどの空池はあれだけ深い窪みなのに水が全く無かった。てっきり地質の関係で水はけが非常に良く、降った雨はすぐに地面に浸透するんだろうと思っていた。

しかしどうだ、すぐ近くにあるこの御池。なみなみと水をたたえているではないか。水はけの良い地質、というわけではないようだ。大自然の不思議だな。

あまりにさりげなく池が存在しているので、「おお」とは思ったが「おおおっ」とは思わなかった。こんな山の中にある池だからちょっとだけ希少価値はあるものだが、損な役回りだ。「あれ?空池には水が無かったのにここにはあるのね」という「不思議」が感動を上回ってしまった。

そしてさらに損な役回りなのが中岳で。ちょうど写真正面に見えるのが中岳で、ようやく真っ正面に捉えたぜこんちくしょう、というタイミング。しかし、御池の方に気を取られてしまいあまり相手にされていない。

というか、中岳、山が地味すぎ。「どうだああああ」とそびえ立っているわけでなく、「周囲がもともと標高高いンすよ、んで、ちょっと頑張って出っ張ってみたら九州本土最高峰なんて言われちゃって。びっくりしてるのは僕の方ですよー」ってな感じ。すそ野が広い山ではなく、乳首のようなでっぱりだ。それは言い過ぎか。


中岳全貌10:28

中岳全貌。

「単なるでっぱり」という、山本人からすれば侮辱ものの形容表現をしてしまったおかでんだが、改めて山頂へのルートを見てその気持ちを新たにしたのだった。

でっぱり、というのはさすがにかわいそうだ。取り下げ。中岳さんに敬意を表して・・・そうだな、「丘」というのはどうだ。

やっぱり侮辱している。


天狗ヶ城10:30

視線を進行方向左に逸らすと、そこにあるのは「天狗ヶ城」。

そういえば昨日、阿蘇山で「天狗の舞台」というのがあったっけ。ということは、天狗様はここを根城にして、昼か夜かわからんが、踊りたくなったら阿蘇山まで行って踊り狂っているわけだな。

こっちの方が中岳よりも山っぽいと思う。・・・もういいや、これ以上中岳をおとしめるのはやめとけ。


中岳を真正面に見据える10:35

中岳と天狗ヶ城を結ぶ稜線に出て、90度右向け右。これで山頂まで一直線。


中岳山頂10:43

中岳山頂。

どうなってんだ、これ。ここにもハエが一杯!うわっと、口を開けていると中に入ってきそうだ。やめろ、やーめーろー。

どうして久住山といいこの中岳といい、山頂近辺にハエがたかるんだ。岩しかないぞ、ここは。餌になるようなものなど何もないだろうに。しかもこの大量発生!そんなに豊富に餌があるとでも言うのか。自然の神秘だな。人間にとっては迷惑だけど。


池ノ小屋10:44

御池の方を見下ろすと、石組み造りの避難小屋があった。「池ノ小屋」という名前だ。御池の近くにあるから「池ノ小屋」か。大変に分かりやすいネーミングだ。

登山地図では「使用不可」と注釈がつけられている。確かに、よく見ると屋根の一部が崩落しているように見える。「三匹の子豚」の寓話では、石作りの家が一番頑丈だった筈だったが、石でもダメなものはダメなのだな。


坊ガツル10:47

三俣山の裾野に53haという日本最大級の中間湿原である「坊ガツル」が見えた。ラムサール条約登録地になっている。

湿原のど真ん中に避難小屋らしき建物と、その周辺に登山用テントが何張か確認できた。こんな広大な湿原の真ん中でテント泊したらさぞや気持ち良いことだろう。

この近くには、ある山岳会が個人所有している「あせび小屋」(会員制)と「法華院温泉小屋」がある。法華院温泉小屋はこんな湿原の中に何故、という温泉宿だ。長者原登山口から約2時間弱かかる、秘湯の中でも上位にランクインするであろう温泉。

昔、ここに九重山法華院白水寺というお寺があり、その跡地に温泉山小屋が建てられたものらしい。だから法華院温泉。恐らく硫黄山の噴煙を参拝客に見せ、「あの世で地獄に堕ちたらああいう恐ろしいところだ」と説いたに違いない。開山は500年前というからなかなか歴史がある。ただし、火事で焼失してしまったそうだが。

その珍しい山小屋を発見しようと中岳山頂から探したが、ちょうど位置が悪かったらしく発見できなかった。


硫黄山10:44

雲とかぶっているが、硫黄山から噴煙がぐいぐいとあがっていた。

硫黄「山」と呼称されているが、山そのものではない。星生山の山腹、という表現が正しい。ただ、「硫黄斜面」「硫黄中腹」なんてネーミングはどうもパッとしないので「硫黄山、でいいじゃん。」となったのかもしれない。

まさか大爆発して山が消し飛んだ、というわけではないと思う。


硫黄山拡大10:44

デジカメのズームで寄ってみる。

おお、煙を噴いてるなあ。

あれがあるから法華院温泉が成り立っているのか。相当あの近辺は熱そうだもんな。地中はもうはらわた煮えくりかえっているに違いない。

一方、これだけガンガン沸き立っている場所から直線距離でたった3キロ程度しか離れていない寒の地獄温泉。何であんなに冷たくなっちゃったの、と思わずにはいられない。お前近くに硫黄山があるだろ、どうして14度なんだよ、と。

硫黄という名前がついているからには、山肌が真っ黄色に染まっているのかと思ったが、そういう事はなかった。硫黄「山」が偽装だったように、ここが「硫黄」山なのかどうかも怪しくなってきたぞ。

是非、帰りの時間を遅らせてでもあの近くに接近してみたいが、命が惜しいのでそれはやめておく。というか立ち入り禁止だし。


天狗ヶ城に登るかちょっと考える10:53

中岳はハエが多くて、すっかり嫌われてしまったので早々に退散する。

写真は御池に向かう分岐から正面の天狗ヶ城を見上げた図。

御池湖畔を歩かず、こっちの「よりハードがお望みの方コース」もある。どちらでも下山できる。一瞬どっちにしようか考えたが、結局先ほど通った湖畔ルートを通ることにした。九州本土最高峰、の山を登ってしまったのでそれ以外の山に興味が薄れてしまったというのが正直なところ。

登るのは一息なんだけどね、またハエの大群におそわれるのはイヤだし。


久住分かれへの道11:01

行きに通った道を戻る。

久住分かれに向かうが、途中巻き道があってピークを乗り越えなくて良いのと、ショートカットができることがわかった。ありがたく使わせてもらう。

(つづく) 

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