ホーム > 蕎麦喰い人種行動観察 > 信州・松本そば祭り2009
<その1>
今年も新蕎麦シーズン突入。気が早い事に、幌加内の方じゃ9月早々に新蕎麦まつりを済ませてしまったようだが、蕎麦祭りだらけの信州地方は10月が本場。小さなところでは、一店舗だけだけど「そば祭り」を名乗っているところもあるし、大規模なところになると蕎麦店の屋台が並ぶようなものまである。それが、「信州・松本そば祭り」。
今年で第6回目になる松本のそば祭り。以前、第2回の時に訪問したことがある。女子校が出店していたりして、ちょっと独特な雰囲気が面白かった。ただ、蕎麦の味は特に見どころはなかった、と記憶している。
そんなわけで、二度目の訪問はないだろうと思っていたのだが、知人と話をしている中でこのそば祭りが話題となり、そのままレッツゴーという段取りになった。
調べてみると、今年は24もの蕎麦ブースが軒を連ねるらしい。いつの間にか、規模が巨大化している。昨年訪れた日光そば祭りが恐らく日本最大だと思うが、そこも24店舗。いつの間にか松本も巨大イベントに成長していた。
訪れたのは10月11日、3連休の中日だ。1,000円高速の影響もあって、中央道下りは45kmの渋滞、関越道下りは30kmの渋滞予報が出ていて、行く前からげんなり。結局、渋滞を避けるために朝5時に家を出発した。蕎麦を食べに行くには、気力体力が備わっていないと無理だな。

渋滞の先手を取ったつもりだったが、みんな考える事は同じ。皆様早起きして、精を出して車を高速道路に突撃。お陰でまだ夜明けなのにノロノロ運転。中央道を避けて、関越道から松本を目指したので、まだこれでもマシな方だろう。
途中、横川SAに立ち寄る。
「大変であります!朝食バイキング実施中、の文字が!」
うおおお。
いや、冗談です。食べません。これから蕎麦食べるのに、こんなところで食事なんてできるかアホー。
1,000円高速になってから、ますますSAやPAでの朝食需要が増えるだろう。このSAの場合、朝7時から営業、となっているが、いっそのこと朝5時からやっても結構売上が見込めるのではないか。
そんな考察をしていたら、同行者はおにぎりをかじっていた。
「ありゃ、蕎麦食べる前になんてことを」
「いや、いいんスよ。あと3時間くらいあるので、ちょうど消化される筈なんで」
なるほど。
確かに、自分のようにストイックに蕎麦食べまくるってのは正直どうよ、と我ながら思う。蕎麦も食べつつ、その他の料理や観光も楽しむというのが良いのではないか、と自問自答してしまった。蕎麦食べ歩きスタンプラリーをやっているわけでもないし、大食いチャレンジでもないし、蕎麦評論家になった覚えもないし。
おにぎり食べている彼が急にリア充に見えてきた。
湯ノ丸から下道に降り、鹿教湯を経由して松本へ。
そば祭りはパーク&ライドが採用されていて、町はずれの合同庁舎駐車場に車を停め、そこから無料シャトルバスで移動ということになっている。しかし、合同庁舎の駐車場が一杯の場合は、もうしょうがないので松本市内のどっかのコインパーキングにでも停めてつかあさい、という事になる。だから、正確に言うとパーク&ライドではない。
合同庁舎は確か松本ICのすぐ近く、くらいの記憶で現地に向かったら、発見できず少し焦った。案内標識くらい出ていると思ったのだが、油断していた。少しだけ遠回りして、駐車場へ。
所詮合同庁舎なので、駐車場のキャパは知れている。早めに到着しないと、駐車場難民になるだろう。早出・早着しておいて良かった。朝8時半の時点で4割くらい埋まっていた。

そば祭りは10時からスタートということだが、そんなわけで既にシャトルバス乗り場には行列が。逆に、車の数の割には行列が少ないのだが、他の人は一体どこへ消えた?
始発のバスは9時にここを出発するという。それまで行列で待機。行列の脇には長机が置いてあって、そば祭りのパンフレットを無料配布していた。パンフレットがあるのはありがたい。今の内にどのお店に行くか、作戦を練ることができる。
あと、パンフレットとは別に、100円で小冊子が売られていた。「そば文庫」と言うらしい。スタッフの方曰く、地元の人が選んだ蕎麦店のガイド本なんだそうだ。100円と非常に格安で、120店舗紹介されているのはなかなかそそられる。しかし、中信地方のお店を120店舗も紹介って、ちょっと数が多すぎだ。観光客の立場からしたら、絞り込みが足りず情報過多。さすがに買うのはやめておいた。

無料配布のパンフレット。それなりのページ数があり、国宝・松本城の紹介や松本市街の見どころ紹介記事も掲載されている親切な内容。
ただ、今はそれどころじゃない。どんなお店が出店するのか、そしてどのお店を優先させるのかを綿密に検討せねば。何せ、公式webサイトには店舗情報が載っていないという謎すぎる構成。今、ようやくお店の全貌を知ることができるのだった。
ちなみに、公式サイトには「県内10団体、県外10団体の計20ブースを予定」と記されているだけ。どうなっとるんだ。普通、出店ブースはこんな団体ですよ、と紹介することで集客を図るものだが。しかも、最終的には24ブースが出店しとる。これまた、どうなっとるんだ。
同行者と作戦会議をする。しかし、全く結論が出ない。「いかんな、結論がでないぞ」と一旦お互いの議論をリセットし、これまでの議論内容をまとめた上で再度審議入りさせても、やっぱり結論がでない。それは、良いお店だらけで困ったねぇ、という話ではなく、「実物見て、喰ってみんことにはよく分からん!」となってしまうからだ。議論すればするほど、どれも横一線に見える。すっげぇ美味そうな売り文句や写真が無い変わりに、ダメダメなところも殆どない。
結局、きりがないので「このお店は行かなくていいや、というものをピックアップして、消去法にしていこう」ということにし、何店舗か切り捨てていった。たとえば、「いばらき蕎麦の会」や「会津山都蕎麦 蕎邑」なんてのはそば祭り行脚をしている集団なので、別の機会に食べることは可能。故に今回はサヨウナラ、となる。その他にも何店舗か却下。
あと、ブースの位置を確認しつつ、「多分会場入口近辺って行列ができにくい筈。ざっと会場を見てから、食べる店を決める筈だから・・・だからこそ、会場の奥の方の店から先に行こう」なんて議論をしておいた。混んで行列ができるのは目に見えるので、できるだけ効率よくお店を回らないと。先手先手で。

9時になると行列がずいぶんと伸びていた。一度にバスに乗れるのか心配だったが、案外バスって人が乗れるものだ。全部わっさーと根こそぎ人を収容し、松本城近くまで護送。
バスの乗降場となっている駐車場から、歩いて会場に向かう。10時からは歩行者天国となる道だが、ただいま準備中。
ちょうど松本城の入口前にファミリーマートがあったが、そこでは店員さんが屋台を出して、Lチキなどの販売準備を進めていた。絶好の商機だ。しかし、ここでコンビニB級グルメを食べたら、ある意味負け。間違ってもそっちで胃袋を満たしちゃダメだ。ただし、お子様は蕎麦なんかよりこっちの方が好きだろうから、親子で来るときはぐずる子供を黙らせる材料として使えるかも。
「10時スタートだけど、フライング営業している店はあるか?」
というのが、バスに乗っている間我々の議題になったところだ。10時になったらアナウンスがあって、ヨーイドンというのはなんか変な話だ。別に勝敗を競っているわけでもないし、準備でき次第オープンでも良さそうだ。だったら、まだ9時20分だけど、営業している店があったらそこから優先して食べ歩く事になるんだろうね、と話をしていた。
実際、会場入りしてみると、既に一部店舗では営業を開始していた。しかも、行列が既にできているお店まで。やばいやばい、先行逃げ切りのつもりだったが、出遅れ気味になっているぞ。ちょっと焦る。
この手のイベントは、お昼時になると激混みになるのがお約束。昼のピーク前にどれだけお店を回る事ができるか、というのが今回のキーポイントだったのだが。
「とりあえず、会場の奥まで」
と移動している最中、なんだか怪しいTシャツを売っている店発見。「そばは水まわしできまる!」と書かれている。だから何なんだ、というTシャツ。松本そばまつりのキャラクターが描かれているところをみると、公式Tシャツなのだろうか?
こんなん、買っても着る場所がない。室内着として着るには1,200円払う気がしないし、外で着るのは激しくイマイチ感が漂う。誰がこんなの買うんだ・・・と思っていたら、帰りがけにガイジンさんが嬉しそうにこのTシャツを着ていた。なんかよくわからんが、クールと思ったのだろう。むう、奥が深い。
そば祭りの会場は、松本城のお堀を取り囲む公園にあり、ぐるっと半周に及んでいる。お堀の北側はすぐ道路になっているので、もうこれ以上会場規模は大きくできない状態。そのせいで、蕎麦ブースだけでなく、小規模な物販ブースも結構窮屈そうに配置されている。なにせここは、天安門広場のようなだだっ広い会場ではない。ランダムに木が生えていたり、植え込みがあるので、それを避けつつのブース設営だ。自ずと、利用できる場所は限られる。
さて、まずは蕎麦ブースの中で一番西側奥にあるお店までたどり着いた。恐らく、人の流れとしては「まず会場入りして、『さあ、どこで食べようかねえ』と言いながら店を物色しつつ、一番奥まで流れてくる」筈と我々は踏んでいた。入口近辺は混まず、むしろ会場奥の方が混むのではないか。だから、この早い時間に奥のゾーンは早めにお邪魔しておこう、という算段だ。
なお、毎度毎度悩ましいのが、この手のそば祭りの場合、「プロの蕎麦屋がやっているブース」と「そば好きの同好会がやっているブース」が混在しているということだ。ぱっと見、「そりゃあシロウト集団の蕎麦よりもプロの蕎麦の方が良いだろう」と思ってしまうが、これまでの経験上それは何とも言えない。同好会さんは蕎麦を愛するが故に、採算度外視で良い蕎麦粉を使っていたりする。だから、全く侮れない。
そうなると、お店選びの基準は?というと、もうこれがさっぱり。「行列」というのも全くあてにならない。一見さんだらけなので、蕎麦の下馬評が無いからだ。「並んでまで食べたくないねえ」と言って、行列店を回避した人たちが群がって逆に行列出来ちゃった、なんて事はあり得る。
蕎麦の場合、店が持つ色気というのも重要な判断材料だが、画一的なテントでどう色気を見極めろ、と?無理だ。
結局、「ご縁」があったかないか、それだけの事になる。たまたま空いていたから入りました、とか、客引きのおっちゃんに熱烈歓迎されたから、とか。
ラーメンイベントだと、初日すぐに出店店舗毎の評価が様々なwebや掲示板に掲載される。それだけラーメンフリークが多いし、ネットとの親和性が高いのだが、蕎麦というジャンルではそれが無い。だから、勘で動くしかない。
シャトルバスが来る前、さんざん悩んだ我々は、結局「天ぷらを出しているお店は蕎麦巡りの中盤、蕎麦の味に飽きてきた頃を見計らって訪れよう」と決めることしかできなかった。
で、話が大きく脱線したが、最初に覗いてみたのは一番奥にあるブース、「出石皿そば」だった。関西の蕎麦の名所である出石。場所が関東在住者にとって相当不自由なため、これまで一度も食べたことはない。興味があったのだが・・・あれれ?まだお店が開店していない。店員さんもなんだかのんびり。10時開店を想定して準備を進めているらしい。「準備でき次第、すぐに開店するぜ」というブースもあれば、きっちり10時からやるぜ、という店もあって面白い。
なお、ただいまの時刻は9時20分。こんな時間からフライング営業している蕎麦ブースの方がある意味凄いのであって、この出石皿そばブースにやる気がない、というわけではないので念のため。
ただ、開店前ならブースの脇で蕎麦打ちに精を出していてもよさそうなものだが、蕎麦打ち職人さんが全然いない。蕎麦打ちパフォーマンスをする場すらこの会場では乏しいことから、恐らく蕎麦は別のところで打っているのか、どこかから仕入れているのだろう。
これはその他多数のブースでもそうで、実演をしているところは小数だった。日光や金砂郷の蕎麦まつりとは景色が違う。あの蕎麦打ちパフォーマンスこそが、「そば祭り」っぽくて盛り上がるんだがなあ。ただ、会場スペース、来場者数の関係でそのような事がやりづらいのだろう。
なお、信州蕎麦界のゴッド、金子万平氏は今回のそば祭りを見て「店頭で蕎麦打ちの実演をしていたが、あんな日が照って環境が悪いところで打った蕎麦は美味いのか?」と信濃毎日新聞のコラムで疑問を呈していた。いやまあ、その通りなんスけどね。生地は乾燥するし、砂埃も混じるし、外で打つのは最悪だけど、それはそれ、お祭りですから。
なお、この出石皿そばを後ほど見かけたら、無事営業をしていた。
が、あまり混んではいなかったようだ。たまたまかもしれないが。値段は他店よりも高く、700円だったか800円だったと思う。何でそんなに高いの、と思ったら、食べている人を見てびっくり仰天&納得。なんと、皿そばの名にふさわしく、陶器のしっかりした平皿に蕎麦が盛られ、それが一人前5皿だったのだった。これ、出石から運んできたのか。凄い。今大会でもっともびっくりしました賞進呈。ただし、お腹いっぱいだったので食べなかったけど。
出石皿そば
宝永三年(1706)に但馬國出石藩主と信州上田藩主のお国替えの際、仙石氏と供に信州から来たそば職人の技法と在来のそば打ち技術に加えられ誕生した「出石皿そば現在では関西屈指のそば処として知られています。
[1軒目:信州松本そば打ち美蕎楽交流会 09:27]
私たち会員が「おいしいそば」が食べたいの思いを皆さんに食していただきます。素人の集まりだから出来る、そば粉の厳選とつゆにこだわりました。もりそば・そばゼリーのセットです。美蕎楽セット600円
「さて、どうするかね」
「10時の開店まで、この辺りの店攻めておきますか」
出石皿そばに振られた我々は、早速目標を見失い困っていた時に目についたのがこのブース。はっきり言って、ノーマークだった。そもそも、店舗名がいまいち垢抜けしておらず、自薦文もワクワクはしない。そばゼリーのセットなんていらないし。
ただ、店頭にて高らかに掲げられている「健康そば」ののぼりに若干興味が湧いた。何がどう健康なんだ、と。今更「蕎麦は健康食」なんて言い出すんじゃないだろうな、と。
幟をぽかんと見上げていたら、早速受付のおねいさまにロックオン。「是非食べていってくださいー」とお奨めされまくった。
「何が健康なんですか?」
と聞いたら、「サンルチン」という蕎麦がごっつええで、という事だった。なんだそのサンクロレラみたいな名前は。受付を見ると、どうだ、とばかりにサンルチンの解説パネルが飾られている。なんでも、「ルチンが3倍はいったそば品種」なんだそうだ。なるほど!それで「3ルチン」なわけか。安直というか、分かりやすいというか。そりゃどうも結構なこった。
ルチンとは、蕎麦が健康に良いと言われる所以とも言える成分で、動脈硬化を防ぐとされている。蕎麦を茹でるとルチンは茹で湯に溶けてしまうので、蕎麦湯を飲むと良いとよく言われるのは、ルチンを取り逃がすなという観点からだ。ダッタン蕎麦もルチンが多く含まれているが、あれは相当癖がある蕎麦。ダッタンではなく、普通の蕎麦でルチン3倍ならちょっと面白い。3倍、と聞くと、おかでん世代(30代〜40代)はすぐにガンダムを連想してしまうが、さすがに蕎麦は赤くないようだ。ツノも当然生えていない。
「でもなあ、オレらどうせ蕎麦3枚以上食べるし、そんなにルチンとらなくても」
と元も子もないような事を口走りかかったが、これも何かの縁、食べてみることにした。こういうきっかけでも無いと、なかなか「最初の一軒目」が決まらんよ。
ちなみに普通のもりそばが500円、サンルチンも500円だった。パンフレットの自薦文に書いてあった「そばゼリーとのセット600円」というのは、「この店は(食べたくもない)そばゼリーが自動的についてくるんだ、しかも他店より100円高い」と思わせてしまうので、あまり得策ではなかった。
なお、このお店に限らず、大半のブースではいろいろトッピングや天ぷらをつけて客単価向上を狙っていた。邪道じゃん、そば一本で勝負しろよ、と若造おかでんは憤慨。しかし、空腹が満たされ冷静になってみると、「求道者的に蕎麦喰ってるのもつまらんよな、蕎麦から広がるいろいろな食の可能性、ってあってもいいよな」、と賢者モードに発想が切り替わった。多くの店では天ぷらを出していたが、その他にも「揚げ蕎麦出すぜ、これでビールぐいぐいいっちゃいなYO!」とか「蕎麦と岩魚の塩焼きセットだぜ、おにぎりもつくよ」みたいな店があっても面白いと思う。
「食券を渡す際、そばとうどん、どちらかをお選びください」・・・というのはさすがに立ち食い蕎麦すぎてダメか。
なお、来場者は天ぷら類の「トッピングの面白さ」を基準に店を選んでいる人が多かったようだ。そりゃそうだ、蕎麦なんて食べてみないとわからないわけで、そうなると店選びの基準は「どんなトッピングがあるか」になりやすい。
このお店ではおかでんはサンルチンを、同行者はもりそばをオーダー。二人いると、二種類の蕎麦をシェアできるからありがたい。
「見せてもらおうか、連邦のサンルチンの実力とやらを!」
なお、サンルチンのパネルだが、「100%信州産。100%石臼挽き。」というキャッチコピーが書かれていて苦笑いしてしまった。そうだよなあ、今、こういう表現でもしないと信用できない時代になってきたからな。「石臼挽き蕎麦粉でござい」といっても、実際は30%程度しか入っていません、残りは機械製粉ですという悪質な店だってあるだろう。
厨房は人だらけ。逆に身動きつかなくなってやりにくいんじゃないか、というくらい、人だらけ。蕎麦を茹でる、水で締める、盛りつけるなどのシンプルな行程にこれだけの人を配置しなくちゃいけないのが、そば祭りならではだろう。実店舗でこんな人件費をかけたら、お店としては即死だ。高速道路のサービスエリアのそば・うどんコーナーだって、こんなに人はいない。
蕎麦なんてあっという間に食べられる食べ物。だから、食べるところが無いので入場制限なんてことはなく、必ず厨房がボトルネックになる。お客さんはどんどんやってくるわけで、売上を決めるのは、厨房の手際の良さに尽きる。そりゃ全力で人を投入しないと。
この人数の多さを見て、「ジオンのモビルスーツ『サク』みたいだ」と思った。では、店にやってくるお客はれ連邦の『シム』か。

ルチンそば。本日第一発目。ここは豪快にすすりあげたいところ。松本の秋風、季節の移ろいを鼻腔に感じながら、いざ、蕎麦を手繰ろう。それ、鼻からすすれ。
無茶言うな。
ただでさえ狭い客席、変な事をしてむせたら周りのお客さんの大迷惑だ。何せ、繁盛ラーメン店以上に隣の人、背後の人と密着状態だから。何なんだこの狭さは。
とにかくテントが狭い。いや、建造物として考えればそれなりのデカさなのだが、厨房もあって、客席もあって、人の導線もあって、となるととてもじゃないが狭くてかなわん。お陰で、しわ寄せが客席に来ちゃった。こういう時、隣の人が左利きだと非常に困る。和を乱す。「左利きの方優先席」を端に設けてもよいのではないかとさえ思う。
あと、時節柄、会場はインフルエンザに警戒中。こんなところで、蕎麦にむせたとはいえゴホゴホ言っていたら、即座につまみ出されそうだ。紛らわしい事はよせ。
会場入口にはご丁寧にアルコール消毒液が置いてあったくらいの警戒だが、野外イベントでそれってあんまり意味がないような、と同行者はつぶやいていた。
で、ルチンそば。おおおう、一発目ということで味覚も嗅覚も新鮮なときに良い出会いがありました。これ、香りは殆どないんだけど、味わい深い。もっとダッタンっぽい苦さがあると思ったけど、全然そんなことなし。イロモノ蕎麦だと思っていたが、案外王道をばく進中の蕎麦だ。

一方割を喰ってしまったのがもりそば。味も香りも見どころなく、残念。
ルチンそばと比べてこちらの方が細麺に仕上げてある。ルチンの方は、細切りがしづらい生地なのかもしれない。
つゆは醤油辛さが強く、一口目にイガイガ感を感じる。そして、後味が少々生臭い特徴があった。ルチンそばとの相性は悪くはなかったのだが、もりそばの場合は生臭さが目立ってしまった。蕎麦が細いが故に、気持ちよくずるずるッと手繰れてしまう。その際、生臭さが目立ってしまったのだった。難しいね、そばつゆ、特に辛汁というのは。
とはいえ、サンルチンの蕎麦は「こりゃいいんじゃないですか」と一軒目にして勝利宣言が出るくらい、蕎麦の旨みがあってよろしかった。最初から当たりくじを引いた感じ。
卓上にある薬味類など。
割り箸、葱、わさび、七味、そしてやかんに入った蕎麦湯。
このシーズンになると、花園ラグビー場とか国立競技場であの「魔法の水」がよくグラウンドに登場しますな。ラグビー競技中、強烈な当たりでノビてしまった人にやかんの水をばさーっとかけるとあら不思議、急に復活するという、あれ。あれ、きっと水なんじゃなくて蕎麦湯なんだと思う。
七味が八幡屋磯五郎のブリキ缶なのが嬉しい。これを見ると「ああ長野に来たのぅ」という実感を受ける。東京でもスーパーで売ってはいるが、お値段が相当によろしいので、美味いんだが自宅には配備していない。
箸は割り箸。その他のブースもみな割り箸だった。エコブームということで、主催者は「マイ箸持参」を呼びかけていたが、さすがに呼びかけるだけではなかなか効果はでないと思う。割り箸利用につき10円、とか課金すればもう少しマイ箸が普及するかもしれないけど、それはかえって会計が煩雑になるか?
「マイ箸は無理だとしても、せめて塗り箸を」というお店はどこにもなかった。最近、ラーメン店や牛丼店で塗り箸を採用するところが増えたが、これが非常に滑りやすくて使いにくい。蕎麦にしてもしかり、で、食べにくいから採用に踏み切りにくいのだろう。
ここのそば祭り、狭くて窮屈ではあるが、何が良いって「国宝をオカズにして蕎麦を手繰れる」ということだ。国宝松本城天守閣がほら、眼前に。こんな眺望、なかなかないですぜ。
もっとも、昼時になると歩道は人だらけになってしまうため、この景色を愛でるためには早い時間か遅い時間、そのいずれかになると思う。城を見ながら蕎麦一枚、のつもりがジジババを愛でることになると、大層食欲が失せる。
最後、蕎麦湯を一応飲んでみる。同行者曰く、「つゆの椎茸の香りが強くなった」。確かにそんな感じ。まだ営業開始から時間が経っておらず、薄い蕎麦湯ということもあって、椎茸のお吸い物を頂いているような気分になった。

一軒目の美蕎楽交流会の隣が、やたらとにぎわっている。「北海道そば」のブースだ。なんてシンプル過ぎる名前なんだ、と呆れるくらいストレート。北海道からやってきた蕎麦ブースは他にも数店舗あるし、北海道産の蕎麦粉を使っている店まで含めると結構な数になる。なのに、「北海道そば」。他の奴らは皆邪道、と言わんばかりのシンプルなネーミングが素晴らしい。錦の御旗は我こそにあり、と。
すぐ隣のブースも「幌加内そば」ののぼりを掲げているのだが、なんだかこっちはライセンス供給を受けているだけです、みたいな感じで笑えた。
それは大げさだとしても、「錦の御旗」として真っ赤な「かに」「えび」と染め抜かれたのぼりがたなびいていて、周囲を色香を放っていた。
このお店の売り物は「もり」「かけ」(各500円)と、「天せいろ」「天ぷらそば」(各1,000円)と至って分かりやすい。この天ぷらを目当てに、まだ公式オープン時間前だというのに、早くもそれなりの行列が出来ていたのだから凄い。
ただ、この光景を見ると、「結局蕎麦そのものでの集客って難しいから、オプション品頼りになってしまうんだな」とちょっと残念。何に残念がってるのか、自分でもわからないけど。
確かに、この「かにとえび」攻撃は強烈。我々も列に並びたい衝動に駆られたくらいだ。このブースの場合、コロッケの実演販売のように、店頭で天ぷら揚げパフォーマンスをすればますます客が集まると思う。なんだか本末転倒だが。
「いや待て、この時点で天ぷらなんぞ食べたら後が続かない。今食べるべきではないぞ。蕎麦の味に飽きた時のために取っておくべきだろう」
「でも、その頃になると天ぷらなんて胃袋に入らないかもしれないじゃないっすか」
「ああ、そういう考え方もあるな」
結局、「とりあえずもう少し様子見」といって他のブースを物色後、数分後に戻ってみたら余計行列が伸びていて作戦失敗。まだ9時40分なのに。この調子でいったら、昼頃には行列が長くなりすぎてお堀に誰か、落ちるぞ。
北海道そば
天せいろ(冷)、天ぷらそば(温)1000円。天ぷらは、北海道ならではの蟹に加え、海老とかぼちゃの盛りあわせ。蕎麦は北海道の新蕎麦です。他では、なかなか味わえませんよ!目印は蟹の旗です。

[2軒目:手打ちそば仲間倶楽部 09:44]
メニューは、地鶏の若鶏を使用した鶏せいろ800円、もりそば500円、和歌山県田辺町産の梅を漬けた自家製の梅を梅肉にした、冷たいぶっかけ梅そば700円は毎日限定50食提供いたします。ご来店を、お待ちしております。
方や行列が出来て既に大繁盛のブースがあるのに、未だ営業開始の気配すら見せない出石皿そば。なんだか気になってしまい、「まだやっていないのかな?」と様子を頻繁に見に行くハメになってしまった。その途中にあったお店に、何かのご縁でお立ち寄り。本日2軒目。全くのノーマーク店だったのだが、空いていたのでつい。
なにせ、ネーミングがゆるキャラ系だ。「手打ちそば仲間倶楽部」って。もう少しカッコエエ名前をつけようとは思わなかったのだろうか。蕎麦店名や組織の名前って、気取っているか田舎ぶっているかシンプルか、と相場が決まっているものだ。なんですかこのPTAの知り合い同士で集まりました的名前は。素晴らしい。嫌味じゃないぞ、素直に素晴らしいと思う。いいぞもっとやれ。
メニューは「もり(500円)」「鳥せいろそば(800円)」「梅ぶっかけそば(700円、50食限定)」、「黒舞茸そば(700円、50食限定)」の4種類。限定ものを2つも用意するという先手必勝策に出た。
これ、まだ限定メニューが残っている午前中は希少感を煽ってイイカンジだとは思うが、売り切れた後って大丈夫なんか?残りの通常メニューが「売れ残り」感が強くなって、イマイチな印象を通行人に与えてしまうと思うんだが。4品中2品限定品、というのは相当ギャンブルだ。
とはいえ、「黒舞茸そば」に惹かれたのは事実。限定だから、というより「黒舞茸ってなんだ?」と気になったからだが。ただ、今はひとまず「味に飽きるまではもりそば一本で行く」という骨太の方針2009を自らに課したので、男らしく店頭にて「もりそばを。」とバリトンボイスで発注。
手打ちそば仲間倶楽部の厨房。
まだお客さんの数が少ないが、結構オペレーションに手こずっていた。お昼までになんとか頑張って手際をきわめられるとナイスだ。
このお店ではトッピング類が入った容器をずらりとカウンターに並べ、順繰りに入れていって横に流せば完成、というやり方になっていた。ベルトコンベア方式だ。
しかしこれだと、トッピング担当:わたし一人、となってしまう。蕎麦は一度に大量に茹で上がるため、トッピング工程がボトルネックになるのは明らか。ちょっと工場などの製造業をかじっていれば分かる事なんだが、まだここでは気がついていない。さて、この後どのように改善されていったか、気になる。来年に向けて、「ザ・ゴール」(エリヤフ・ゴールドラット著)という本を読むと良いです。いや、読まなくても良いですけど。
信州松本そば祭りは、厨房に割けるスペースがあまり広くないということもあって厨房内レイアウトはどのお店も似ていた。しかし、それでも効率化を求めて魔改造に挑んでいるブースがあったりして、厨房を眺めるだけでも結構楽しいものだ。また、金砂郷のそば祭りなんて、テント一つがまるごと厨房用として提供されているため、各店舗ごとのやりたい放題になっている。これは即ちノウハウの結晶であり、厨房マニアにはたまらないと思う。でもそんなマニア、いるのか?車の改造大幅ありのレースと、改造殆どダメよレース、それぞれに面白さがあるのと一緒だな。
頭には頭巾もしくはヘアキャップ、口にはマスクの出で立ち。そういうお店が多かったので、主催者方針で着用を義務づけているのかと思ったが、やっていない店もあったのでルール化はされていないようだ。
「おや?使い捨て容器だ」
先ほどの店は再利用できるちゃんとした容器だったのだが、こちらでは一回限りの容器になっていた。このイベント、エコもテーマの一つちゃうんか。
確か、「来場者はマイ箸持参推奨」の他に、このそば祭りのレギュレーションとして「出店者は再利用可能な容器を使うこと」とされていたような気がするのが、記憶違いだったかな。どこかでそういうのを読んだ気がしたのだが・・・。
その時、「うわ、これだと『飯田女子高』みたいなところは出店できないな。ちゃんとした食器類を揃えられるところって、どうしても限定されるからなあ」と真っ先に思ったものだ。「そば祭り行脚をしているプロ集団が中心という時代になるのかねえ」と。
しかしいざフタをあけてみたら、使い捨て容器のお店だらけだった。完全におかでんの勘違いだったらしい。実際問題として、「再利用可能な食器」を使った場合、少なくとも1人はゴミ捨てと食器の回収係、もう一人は食器洗い係、もう一人は食器を拭く係・・・なんて要員計画が必要になる。加えて、食器を洗うためのシンクが必要。シンクは既に茹で上がった蕎麦を水で締めるために使われているので、最低二つシンクがないとダメということになる。物理的にも、人的にもちと面倒くさい。しかも出店可能者が限られる。なかなかそう簡単にはいかん、ということなのだろう。
いずれ、「ラップで巻かれた器で提供。食後はラップを剥がして、また次に使用」なんて事になるだろう。再利用食器と使い捨て食器の中間ってところで落ち着くんじゃないだろうか?
【後注】再利用可能容器の使用を義務づけているのは「日光そばまつり」でした。松本そば祭りではそのような規定はないことが後日判明。
そばを食べている時の二人の会話を以下、ノーカット収録。
偉そうにあれこれ述べているが、実は殆ど内容がない。かえしに使っている素材すら分かっていない。敢えてここでこれを公開するのは、「所詮この程度の舌しか持っていないおかでんが書いているサイトですよ、ここは」という事を提示しておきたかったから。だから、このコーナーのトップページにも書いているが、美味いだの不味いだの時折言い出すが、基本信じちゃいけません、ということ。数百杯も蕎麦を食べても、所詮こんなもんです。
なお、全店舗こういう会話を二人でしていた訳ではないので念のため。後半になるとだらけてくるし、味覚もバカになってくるので非常にいい加減なやりとりに始終している。
「食べ始めで元気な頃は、こんな会話を必死こいてやってました。まだまだ青い奴らめ」くらいにでも思っていただければ。
(だ:同行者の名前)
お「いただきます」
だ「いただきます」
お「ここは・・・手打ちそば仲間倶楽部。すごい名前だな(笑)」
だ「ちょっとねえ、鶏と葱の香りが強すぎて・・・」
お「鶏と葱の香りが強すぎて」
だ「全然・・・」
お「これねぇ、蕎麦の色が」
だ「ちょっと違いますねぇ」
お「ただ、量が少ねぇなあ」
だ「だしが・・・」
お「さっきの店は悪くなかったからな」
(ここで蕎麦を二人とも手繰る)
だ「さっきの、さっきのサンルチンと比べるとアレですが、さっきの盛りそばと比べれば、蕎麦の味がしますよ」
お「蕎麦の香りがするし、あと、蕎麦の・・・唾液が出てくる、噛んだときに。甘みが出てきて」
だ「うんうん」
お「まあよく伝わってくる。唾液分泌量はこっちの方が上だな。なんか、なんだろ。何がピンとこないのかな?・・・うん」
だ「割り箸が臭い(笑)」
お「あ、ほんとだ、割り箸が臭いね(笑)・・・うん、うまいんだよな」
だ「うん、うまい」
お「うまいんだけど、固めに茹でてあって・・・何がおかしいんだろう?あんまり上手いこと、蕎麦をずるずるっと手繰れないのか?」
だ「うん」
お「手繰った後、なんとなく口の中でもさもさしちゃう?」
だ「それは、僕はこれくらいが十分ですけどね。堅さというか、舌触り?」
お「うん・・・つゆがよく冷えていて、ちょっと嬉しいけどね。今、なんかね」
だ「まぁ、まぁ、まぁ・・・」
お「まぁ、熟成が足りない、というのは仕方がないつゆですが」
だ「まぁ、ごく一般的な」
お「でも、バランスが結構」
だ「うん。・・・マイルドさはないですけどね。ま、こんなもんじゃないですか。あのー、仲間?」
お「仲間倶楽部ね」
だ「仲間倶楽部としては、いいんじゃないですか」
お「なんかあの、あんまり・・・ネガティブな事を言う要素はないけれど」
だ「ははは。そぅそうそう、飛び抜けて美味くもない」
お「でも、こういう蕎麦屋が家の近くにあると、ありがたいぜぇ〜」
だ「普通に」
お「ん?・・・でも、蕎麦と一緒につゆを食べると、なんか、つゆが妙に甘く感じるというか」
だ「浸けすぎじゃないですか?」
お「もう少し辛くてもいいんじゃないかと」
(ずるずる)
お「うーん、僕は、蕎麦とつゆと食べたら、なんか、つゆの甘さが後に長引いちゃったな、という気がする。気のせいかな?」
だ「僕はちゃんと蕎麦の味が最後に残りますけどねぇ」
(ずるずる)
お「うーん、このつゆはなんなんだろうなあ?よくあるつゆといえばつゆなんだけどなぁ。あんまりカツオカツオしていないよな」
だ「うんうん」
お「何がこう、カツオを押さえ込んでまったりさせているんだ?・・・昆布か?・・・みりんを結構多めに?」
だ「うん」
お「だとすると、もっと味のバランスが崩れる筈なんだよな。もっと甘くなって、べたっとして」
だ「そうですねえ」
お「ああ、みりんが多いのかもしれない、甘く感じるのは」
だ「蕎麦を浸けた時の方が、甘くは感じますね・・・後に残る感じは、僕はしなかったですねえ」
お「なんだろうね?」
・・・
だ「なんでしょうね?」
・・・
だ「や、コレだけで飲むと、辛いわ」
お「あ・・・。蕎麦湯で薄めると、なんか妙にうまいぞ、これ・・・違う、気のせいか。それをわざわざ言うほどでもない」
だ「うん」
お「うーん」
だ「でも僕は及第点はあげられますね」
お「うん、それはそうだ」
だ「『どうだ、食って見ろ』的なアレを出してない分」
お「うん、そうね。それはやはり『手打ちそば仲間倶楽部』・・・」
だ「(笑)名前が名前だけに、最初油断しますよね」
以上、蕎麦食べ始めから食べ終わりまで全ての会話。実際は食べながらの会話なので、もっと間が空いている。
表現力が無い奴らめ、と思うだろうが、実際そうかどうかは兎も角、マスコミ報道でもなけりゃ大げさな表現なんてしませんってば。外観なんて特に、二人とも同じ物を見ている以上敢えてコメントする必要はないし。
おかでんが執拗に気にしていた「つゆの甘さ」は、恐らく東京風の醤油っ辛いそばつゆに慣れているために感じた違和感だろう。最近、バリエーション豊かに蕎麦を食べていないし、そもそも蕎麦食自体が減っているので、「なんだろう?なんだろう?」とひたすら首をひねっていたのだった。
食後、次なるゾーンに移動。
この辺りは比較的広いスペースがあり、それを取り囲むように5店舗が軒を連ねる激戦区。ちょっと離れたところから、この5つのブースを俯瞰すると結構楽しい。
「おっ、あの店行列ができていますねえ」「しかしその隣は空いているな」
なんて会話をしていたら、数分後には行列の逆転現象が起きることがしばしば。
「空いているブースに並ぼう」という心理が、客足を分散させているらしい。
イベントによる客の導線やさばき方、群衆心理を勉強するには最適のステージだと思った。イベントを検討中の自治体や経験不足の広告代理店はぜひこちらで人物観察をどうぞ。生きた教材ですぜ。
<つづく>
(2009.10.18記)